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「ずっと世界に驚き続けたい」Think the Earth 石川直樹さん名言集

今年4回目、最後のThink the Earth セミナー&サロン、写真家・石川直樹さんの講演は、とても盛況でした。予習していった甲斐がありました。

写真のプロである石川さんですが、いくつもの素敵な文章を書いていることもあり、印象的な言葉が数多く出てきました。特にメモを取ったせりふを中心に、講演での学びを書き留めます。

<旅に関すること>

「辺境なんてどこにもない、ひとの数だけ中心がある」

石川さんの講演は、まず自身の「冒険家」という肩書きを否定するような話から始まりました。『Pole To Pole』は、ある種の冒険だったと思うけれど、チョモランマ(素晴らしい登頂ドキュメンタリー映像を見ました)は多くの人が登っているし、写真集『POLAR』に登場する、アラスカ・グリーンランド・ノルウェーの沿岸には、人々が何一つ不自由なく暮らしている。むしろ「旅人」という肩書きでいいんじゃないでしょうか。この日の話は、写真の話でありながらも、一貫して「旅=世界を知るために動き回る行為」が中心にありました。

この言葉は、POLARの地域を辺境と呼ぶのは、勝手に「中心」を都市に置いている人の言い分で、そうじゃないんだ、という文脈で出て来たと思いますが、中心と周縁については、「島」について語るところでも出て来ました。

最新作『ARCHIPELAGO』(陸から見ると「群島」、海から見ると「多島海」となる)は、石川さんのライフワークである「しま」をテーマとした作品だけれど、「しま」には中心がなく、部分が独立した分散的ネットワークであるところが面白いと言っていました。インターネット的だとも。これって最近よく言及される「ノマド・ワーキング」とか、近未来的な働き方にも、すごく共通するとらえ方だと思います。

「一歩も動かなくても、神話や伝統を受け継ぐことで世界を深く知ることができる」

村を一度も出たことのない、アラスカ・シシュマレフのおばあさん。沖縄島嶼部で伝統的な祭を伝える人々。石川さんは旅をしながら、世界を知るために世界を歩くこと以外にも、全く動かないまま旅をする方法があることに気がついたといいます。沖縄の写真家・平敷兼七さんも、「井の中の蛙、一点を見つめる」という言葉で、動かない旅の在り方に言及していました。

ARCHIPELAGO 前半部分(沖縄諸島・台湾・金門島編)の写真を見ながらのセッションは、全体を通して「マツリ(祭・祀り)」の描写が中心でした。悪石島の「ボゼ」をはじめ、さまざまな「異形の者」が登場し、それを迎え入れることで無病息災を願う、本土とは違う伝統的な祭が根付いている、という説明。「見えない島を心の中に抱いている」という表現も印象的でした。

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<写真に関すること>

「メッセージを込めれば込めるほど、つたわるものが少なくなる」

これ、「伝わる」ための方法をテーマにしたセミナーとしては、けっこう逆を衝く言葉でした。被写体が遠くにあって、「なんだろうこれ?」という状態のときに、身体が反応して、びっくりして撮る、というのが写真の価値であって、それに反応してくれたらうれしいし、反応してくれなくてもいい、というスタンス。

人間の美意識なんてちっぽけなもので、風景を切り取るのではなくて「世界を受け止める」のだ、という言い方もされていました。過酷な自然を知る旅人だからこその認識、また、アーティスト的な認識だと思います。企業やNPOのコミュニケーションにおいても、写真に多くを語らせるようなとき、写真選びの重要な指針であるのかもしれません。

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<まとめ>

「ずっと世界に驚き続けたい」

旅と写真に生きる石川さんらしい締めの一言。
「2009年もあっという間に終わっちゃったな、とかもう言う人がいますけど、驚きが少ないと、時間の流れが速いんですよね。」という痛烈な表現もありました。好奇心をつねに持って世界に相対するということ。

会場からの質疑応答一発目は、「石川さんでも驚きが減ってくることはあるのか、そういうときはどのように感覚を磨き直すのか」という質問をしました。その答えは、まさに「気の持ちようで、いくらでも驚ける」ということ。同じ場所に何回足を運んでも、いつも新しい発見ができ、違う驚きに出会える。これは、発見でした。

セミナーの副題でもあった「撮ることで広がる世界」は、カメラを構えたり、身体が反応してシャッターを切ったり、という行為を媒介にして、世界に対する驚きを絶やさないようにすることの大切さを説いたものかもしれません。

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終了後、Amazonで在庫がなくなっていた、石川さん最初の写真集『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風―石川直樹写真集』を会場で購入し、サインをいただきました!
POLE TO POLEは文章版(こちらは日記風)の入手も難しいけれど、セットで読むことで、知らない世界が見えてきます。

石川さんの作品は東京都写真美術館で12/19から開催される「日本の新進作家展:出発−6人のアーティストによる旅」という展示、そして、品川 キャノンギャラリーSで12/24から開かれるARCHIPELAGO展で見ることができます。驚きの片鱗を、是非。

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