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聴くことは、どうして嬉しいのか――女神山の6日間

西村佳哲さんが主催した「インタビューのワークショップ」(2010/9/20-25、於:信州上田・女神山)に参加してから、純粋に「人の話を聴く」ということが、嬉しくってしょうがない。これまではなかなか人の話に興味を持ち続けられなかったり、問いが出てこなくて居心地の悪さを感じることが多かった。女神山で、12人の参加者同士でお互いにインタビューを繰り返し、5泊6日の試行錯誤を重ねた中で、「聴く」という行為が、自分の中で大きく変容したように感じている。なぜ、こんなに聴くことが嬉しいのか、6日間を振り返ってみた。

問うのではなく、言い直して、ついていく

インタビューのワークショップが始まるとき、インタビューがうまくなるために、「質問力」を高めたり、「言い換え、要約の技術」を磨かなければならないと思っていた。だけど、そうじゃなくて、もっと大事なことがあった。

その一つが、「相手の考えや感情を正確に言い直す」こと。

コーチングの本などでは「バックトラッキング(オウム返し)」として登場する基礎テクニックだ。しかし、何でもかんでもオウム返しにすれば話が続くわけではない。

大きな指針は、「事柄ではなく、気持ちについていく」こと。

よく覚えている一つの演習がある。

「引越し屋さんが1週間後に来るんだけど、間に合わないかもしれないんだよね」という話し手の一言に対して、「引越し屋さん。」「1週間後。」を拾うのは、事柄についていく聴き方。「間に合わないかもしれない」を拾うのは、気持ちについていく聴き方。後者の方が、相手の話したい気持ちを邪魔せずについていくことができる。

この感覚を味わうために、2人組で、話し手が同じ話を2回する、という演習を行った。1回目は、徹底的に事柄についていく。2回目は、徹底的に気持ちについていく。

変なオウム返しをすると、話す方は困惑したり、混乱したり、話が逸れていったりする。聞き手が相手の気持ち、とくに形容詞になる前の「感覚的な言葉」とか、言いよどんでいる言葉とかを、焦らずじっくり拾っていくことに集中していると、自然と相手と同じ方向に向いて、同じ風景が見えるようになっていく。

そのまま繰り返すのか、言い換えるのか?

相手がうまく言葉にできない気持ちに接すると、つい「それって〇〇ってこと?」と、言い換えてしまいたくなる。言い換えは、高度な技術だ。自分の理解できる感覚や価値観の範囲で、「自分の定規をあてて、わかったつもり」になってしまえば、それは誤解であり、勘違い。勘違いしたまま話が進むと、深いところに行けない、上滑りした話になってしまう。これを克服するために何度か、「言い換え禁止」を自分ルールに設定して、インタビュー演習(2人組、またはオブザーバー含む3人組で聴き合う『コ・インタビュー』)に臨んだ。

しかし、お互いに安易な了解をせず、「正確に言い直すまで発言しない」合意のもとでは、適切な言い換えが効果的なこともある。やっぱり言い換えながら探って行くほうが、自分としては気持ちがいい。それが「自分の定規をあてる」のではなくて、相手の感覚に意識を向け続けていられれば、そうそう大きな行き違いは起こらない。

スタッカートから、スラーへ

気持ちについていく、というスタンスを学んだことで、今まで人との会話において大きな課題であった、「話がぶちぶち切れてしまう問題」が解決に向かう。いわば、スタッカート(1音ずつ短く区切る奏法)の関係から、スラー(音を切らずになめらかに演奏すること)の関係への変化だ。新しい質問をどんどん繰り出していかなければ話が続かない、なんてことはない。

かえって、不用意に「別の質問」をぶつけないほうが、話し手の中に生まれた気持ちを「育てる」ことにつながる。もやもやした言葉にならない感情を引っ張り上げるには、時間がかかる。その時間をじっくり待つことも必要。沈黙を受容することも必要。

何度か演習で体験した「素うどん型」と呼ぶインタビュー形式は、最初の質問だけを用意し、あとは「相手の提供してくれたものだけしか使わない」というスタイルだ。本当に高度で、ある程度信頼関係が醸成されていないと使えない手法だと思う(事前準備が不十分でも話が聴けるほど、現実のインタビューは甘くなかった)けれど、衝撃的なインタビューの方法だった。そういうやり方もあるんだ、というのを知ったことで、聴き方はますます多様に、面白くなったと思う。

どういうご縁か、帰ってきてから立て続けに、インタビューの仕事が続いている。5年ぐらいずっと切ってもらっているスタイリストに1万5千字のロングインタビューをしたり、文化の日には1時間のインタビューを3本連続でやったり…。目下、聴いた話を記事として編集していく作業に七転八倒中で、もう少ししたら発信できるようになる。

聴いてて嬉しいインタビューと、これからの人生、どう付き合っていくか。それが今いちばん、わくわくしているテーマになっている。

+ 西村さんによる次回の「インタビューの教室」は、12/28-30の2泊3日、代々木にて開催。
http://www.livingworld.net/interview1012/

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