Pages Navigation Menu

For Creative Communication

暗黙知の共有に効く?パターンランゲージの可能性

Into the distance

型にはまらない知識共有の手法として、「パターンランゲージ(Pattern Language)」の可能性に今、注目しています。

パターンランゲージは、もともと建築の知識を体系化するために、クリストファー・アレグザンダーという人が用いたフォーマットです。そのフォーマットは時を経て、ソフトウェアのインターフェースデザインを始め、さまざまなところで応用されています。私がパターンランゲージを知ったのは、IA (Information Architecture)に関するセミナーでした。江渡浩一郎さんの『パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則』でも紹介されています。

さて、その応用範囲を最近大きく広げているのが、慶応大学SFCの井庭崇(@takashiiba)先生です。井庭先生の研究室では、はてなブックマークでも一時話題になった”Presentation Patterns“や、「外国語習得」「子どもの学び」「ビジュアライゼーション」など、様々なテーマでパターンランゲージ形式のアウトプットを、授業の成果として生み出しています。井庭研のフォーマットを知るには、代表作である “学習パターン(Learning Pattern)” をご覧いただくのが一番かと思います。解説付きのスライドがslideshareに上がっていました。(ちょうど今日、研究室の最終発表会があった模様。アウトプットが気になる!)

さて、私が感じているパターンランゲージ最大の魅力は、『状況(context) – 問題点(problem) – 解決策(solution)』という基礎フォーマットです。常に課題と解決(コンサル風に言うとAsIsとToBe)がセットになっているので、一つ一つのパターンが、常に何かしらの問題を解決する方法になるわけです。また、状況(context)がセットになることで、コンテクストから逆引きで、ある状況下で必要とされるパターンを抽出することができます。

もう一つの大きな特徴は、複数のパターンが階層的につながり合って(シーケンシャルに)全体を構成しているということです。元祖パターンランゲージは、「都市全体の設計」という鳥瞰的な視点から、近隣、建物、部屋、建築技法と、段階的に詳細化していきながら、「このパターンが関連するのは何番と何番です」という、いわばハイパーリンクが記述されています。本質的な全体をとらえつつ、現場ですぐに使える具体的なハウツーも組み込まれるという、非常にバランスのよい構成です。

パターンランゲージの解説書とも言える、クリストファー・アレグザンダー『時を超えた建設の道』には、次のような記述があります。

「個々のパタンに意味をもたらすのはネットワークの構造であり、それが個々のパタンをしっかりつなぎ留め、パタンの完成を助ける」(p253)

この特徴は、「暗黙知の共有」に非常に適したものだと思います。「マニュアル」では型にはまりやすく、単なる「Wiki」では検索性や網羅性に劣る…。パターンランゲージのフォーマットに沿うことで、現場にとって使いやすいものができあがるのではないかと考えています。いま会社で取り組んでいる「Project Designing」=Creative, Innovative, and FUN! なWeb制作のナレッジをまとめていくプロジェクトにも、この方法がまさに適していると考えています。

「パタン・ランゲージこそ個人の創造力の源であり、またランゲージなしには何も創造できまい。ランゲージ自体は何も作り出せないが、人を創造的にさせるのがランゲージである」(前掲書p169)

パターンランゲージをつくる上で、重要になることはなんでしょうか。『時を超えた建設の道』では、「生きたランゲージ」というキーワードが繰り返し登場します。要は、単にフォーマットだけを模倣しても、現場で繰り返し使われるものでなければ意味がない、ということです。

「各人の頭の中で絶えず再生を繰り返さねば、生きたランゲージにはならない。」(前掲書p271)

生きたランゲージを生み出すためには、「そのパタンが生み出す体験を明確にイメージする(p315)」ことが大事、と書かれています。常に、生み出される「体験(experience)」に注目すること。奇しくもそれは、Web制作という活動では、おそらく最も重要な視点と一致しています。2012年は、いかに生きたランゲージを生み出せるか、また、同じ視点で「生きたWebサイト」を作り出せるかが、大きなチャレンジになりそうです。

Reference

プレゼンテーションパターン
ラーニングパターン

コメントを残す