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For Creative Communication

Fablife的な「とりあえず、つくる」が席巻する世界 #NCC2012

2012年9月28日、東京・恵比寿で開かれたデジタルガレージのカンファレンス “THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2012 TOKYO(#ncc2012)に参加しました。我らが諏訪光洋社長 @suwaws が登壇するご縁に乗っかって、京都から2泊3日で参戦。スピーチとパネルディスカッションが続いた第1日目を速報的にレポートします。

Ncc attack

(1) FABとオープンソースハードウェア

NCC2012のAトラック「インターネットデバイス」では、ソフトウェアに対する「モノづくり」=ハードウェアビジネスを取り巻く変化に焦点を当てたトークが続きました。工作機械のコストが下がり、プロトタイピングや少量生産が気軽にできるようになる。諏訪さんが紹介した、Fabcafeに鎮座ましますレーザーカッターや…

Lasercutter

細身でチャーミングな(LW女性陣談)香港のギーク、Nicholas Wangが提供する、たった300ドル(つまり2万3千円!PS Vitaより安いくらいの値段)の3Dプリンター「Makibox」など、手の届くところに工作用のマシンが現れています。また、Fablabなどものづくりを愛する人たちの間で、共有やネットワーキングが進み、設備投資をせずに立体的なモノが作れる環境も整ってきています。Nicholasは「Maker Divide(作る人/消費する人/作らない人の格差)」が広がり、そのインパクトが大きくなると話していました。

▼パネル中。右からJoi,諏訪さん,真ん中がNicholas
Untitled

▼Makibox。
Makibox

さらに、IAMAS小林茂先生が作った Arduino Fio というICチップ(プリント基板)は「オープンソースハードウェア」。公開されている設計資料をダウンロードし、個々人が部品を調達して組み立てれば使える、というものです。オープンなライセンスで公開されたFIOは、リリース3週間後に中国から”Remix”が登場し、その基盤の裏にはちゃんとオリジナル開発者のクレジットが入っていたといいます。

ArduinoFio

このようなオープンソースのチップは、Pieter Franken氏のチーム “Safecast” がつくるガイガーカウンターにも入っています(※これもしかしたら勘違いかも)。Safecastのガイガーカウンターは、測定したデータをクラウドに送って、計測値を地図にマッピングします。他にも、多くのオープンソースハードウェアが、各種センサーとともにGPSやWifi・3Gなどの通信装置を備え、さまざまなデータをクラウドに送れるように作られています(たとえばSafecastが計測した放射線量のデータは、GoogleMaps上にマッピングされているものが見られる)。

Safecast

* * *

さて、この一連の流れは、ちょうど直前に読んだ『Fablife』という本の内容に、非常に強くリンクするものでした。

Fablifeでは、SFCの田中浩也先生が、さまざまな”Fab”用の工作機械を駆使して、「歩く植木鉢」をつくるために奮闘するくだりがあります。オープンソースハードウェアのArduino(アルドゥイーノ)を「使わずに」、チップとそれに連動するプログラムを徹夜で組む、というシーンが印象的で、小林先生以降の話は特に興味深く聞きました。

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)
FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

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田中 浩也
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実は、道玄坂にFabcafeができてから、自分はまだ一度もレーザーカッターを使ったことがなくて、「何かかわいいものをつくるやつかー」ぐらいのぼんやりした認識にとどまっていました。でも、3Dプリンターやレーザーカッターが「箱(ケース)」を短時間で作り、「チップ」「センサー」「通信装置」を格納することで、生み出されたモノは「インターネット」に接続され、データを吐き出しながら動き出すわけです。

Joiこと伊藤穣一氏が、基調講演で『「とりあえずつくっちゃう、が”After Internet(AI)”の哲学』という話をしていました。Fablifeが描き、きょうのNCCで紹介されたような工作環境の変化が、インターネットとつながって、スタートアップビジネスの世界を大きく塗り替えている、というイメージが鮮明になりました。

(2) 「ロジ」を補強する新しいベンチャー支援

もう一つの潮流は、投資家(ベンチャーキャピタル)の立ち位置にいる人々が、資金提供や全般的な経営アドバイスに限らず、ハードウェアビジネスに特有の業務領域をサポートする動きです。

Liam Casey氏率いる、中国・深圳のPCH Internationalは、製造業たるハードウェアビジネスに必要な「流通/サプライチェーン」の分野に専門性を持っています。Liamのスピーチの中でも、在庫管理や在庫回転率、パッケージ(Out of Box Experience)、フルフィルメント(Fulfillment/注文から発注までの一連の関連業務)の重要性に言及していました。PCHはAppleをはじめとする大手メーカーとの仕事があり、そこで培ったノウハウをスタートアップの支援に生かしているそうです。

▼PCHの会社紹介PV。

Cyril Ebersweiler氏の “HAXLR8R” (ハクセラレーター:Hardware + Accelerator)も、ハードウェアスタートアップに特化した組織です。Cyrilは、「ハードウェアビジネスはやらなきゃいけないことがたくさんある」からこそ、「アクセラレーター」の存在が必須だと言っていました。投資家サイドが「アイデア」と「プロダクト」をつなぐブリッジの役割を担い、起業家は本来の「製品」(Products & Services)に集中できる環境の中で、CyrilはLeapmotionをはじめとする、さまざまなテクノロジーベンチャーを育てています。

▼きょう一番ぐっときたLeapmotionのビデオ。

一方、スタートアップの資金調達は、もっぱらクラウドファンディングサービスのKickstarterが使われているようです。SafecastもKickstarterで、何もないところから10万ドル以上の資金を集めています。Cyrilもパネルの中で、ハードウェアのイノベーションを変えるキッカケとして、第一にKickstarterを挙げていました。

Kick

小林茂先生が「Kickstarterを眺めていると、目についたプロジェクトにはついBack(出資)しちゃうんだよね」と言っていましたが、彼のように小さな共感が積み重なって、ある程度の立ち上げ資金を集め、安価に試作を繰り返したり、サプライチェーンを活用して投資を抑えながら、事業を進めていく…というのが、ハードウェアベンチャーでも主流になってきているようです。

(3) 遍在するデジタルデバイスが生み出すデータをどうするか

基調講演からたびたび登場した”M2M(Machine-to-Machine/Management)“というキーワードは、インターネットにつながったデバイス同士が相互に情報をやりとりするシステムを指します。ネットにつながるチップを搭載したオープンソースハードウェアがどんどん広まることで、取得されるデータは膨大になり、IDをトラックすることで、個人を特定しなくても、さまざまな情報が取れるようになります。

村井純先生が基調講演で指摘していた「データは誰のものか?」という問いには、結局結論が出ていなかったように思いますが、「いろいろ法的問題やリスクはあるけれど、とりあえず活用してみよう」というのが、Joiや村井先生の考え方のようでした。曰く、「免疫と一緒で、たまに転んだり病気にならないと強くならない」。法規制、リスク回避の姿勢が強くなると前に進めなくなるから、やってみて失敗したら直していけばいい、というのが、Joiの”Principles”の1つ、「disobedience over compliance(法の遵守よりも不従順)」が表す哲学だと受け取りました。

(感想)予想外に面白かったハードの話

#NCC2012への参加を決めた時、トラックタイトルを見ながら「ハードウェアビジネスと海外のEC事情…どちらもあまり仕事に直結しなさそう(あえていえば近いのは後者?)」と思っていました。だいぶ迷った末、1日ほぼ通してAトラックに参加した(インドネシアの話だけBトラックを聴いた)のですが、ハードの話は予想外に面白かったというのが率直な感想です。

スタートアップに必要なチームの要素として、“Hacker, Hustler, Hipster”の3つの役割が挙げられます。ハッカーは、技術の人。ハスラーは、ビジネスとマーケティングの人。そしてヒップスターはデザインの人です。きょうのハードウェアの話は、どちらかというと”Hacker”が主導する文脈が多いように感じました(3Dプリンタやミリングマシンを使った工作の敷居が下がったといっても、やっぱりそれなりの工学的知識は必要)。でも、さまざまなアイデアから出発して新しいハードウェアを作る時、どれだけ「カッコよくてわくわくするもの」にできるかは、”Hipster”=クリエイティブを担う人の役割が大きいはず。ちょうど前日に、社内のディスカッションで、「我々はHipsterの先陣として、Creative Leadershipでどんどんイノベーションを起こしていきたいね!」という話をしていたこともあり、これからオープンハードウェアが席巻するであろう世界に、とてもわくわくする可能性があることを感じられた一日でした。

つづいて今日はアンカンファレンス!

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