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Frog流リサーチドキュメントを読んで学んだこと – Afford TWO, Eat ONE

ボスが今朝の朝会で、”Afford TWO, Eat ONE” という調査レポートを紹介していました。

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この調査は、東南アジア・ミャンマーの首都ヤンゴンや農村地域で、貧しい住民たちが「お金をどのように得、どのように使っているか」を精細に紐解いたものです。
元FrogのJan Chipchase氏が関わっていて、このドキュメントだけで205ページ。調査段階のアウトプットの作り方として、とても勉強になったので、少し紹介します。

Proximity DesignsのWebサイトから、PDFが無料でダウンロードできます。また、レポートと写真は、Creative Commons by-nc-sa(表示・非営利・継承)で公開されています。

調査手法とチーム

この調査は、大量の「インタビュー」で成り立っています。

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1件1〜3時間もの時間をかけて行うIn-Depth Contextual(文脈的調査)が、39人。
1件5〜50分のAd Hoc(アドホック:突発的?)インタビューが、88人。
対個人だけでなく、Dyad(夫婦などペアでのインタビュー)、グループインタビューなど、様々な形態を組合せた調査をしています。

調査は、ミャンマー首都ヤンゴンを含む、国内の7つの町を巡って実施。

調査チームは「9名」で構成されていて、うち6名が、地元ヤンゴンのデザインファーム Proximity Designs のリサーチャーたちです。デザイナーも含まれています。そしてfrogのストラテジストVenetia、クリエイティブディレクターLauren。ヤン。
Proximityの役割に “Cultural expertise” (文化的専門性)という記述がありましたが、通訳も含め、現地に精通したメンバーは不可欠。人数は時々増減しながら、ファシリテーター/通訳/ノート記録/写真撮影の役割を分担してこなしたり、時には「外国人スタッフ」を除くメンバーだけで進めることもあったそうです。

p199_team2

調査内容には、個人の細かい支出額、通年の収支推移、お金の入った引き出しの写真(笑)など、かなり突っ込んだ内容が多く盛り込まれており、これをどうやって聞き出したのか?(ラポールとかそういう次元なの?)は、とても興味があります。調査期間以前に、しっかり関係構築を行うプロセスがあったのでしょうか。

リサーチ結果のまとめ方

リサーチドキュメントはいくつかのパートに分かれて構成されていますが、印象的なのは「Archetypes」の章と、「Insights & Findings」の章です。

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Archetypes(アーキタイプ:原型)は、人々の特性や行動を「モデル化」したものと説明されています。いわゆるペルソナのことかな?
6名のアーキタイプが登場し、それぞれのアーキタイプごとに、キャラクターが記述されています。写真や収支データはもちろん、実際のインタビュイーの発言からの特徴的な引用も目を引きます。こういった類型化はよくありますが、上記の通り150人ぐらいのインプットの中から6つの類型を導いているわけで、モデル化の精度は高そうです。モデル間の遷移(Shift)の可能性についても記述されています。

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もう一つの Insights & Findings(洞察と発見)は、この資料の本題とも言える、調査結果からの考察部分で、21のInsights(洞察)と13のFindings(発見)が記述されています。
※InsightsとFindingsの違いってちょっとわかりにくいですが、Insightsは内的な気づき、Findingsは能動的に見つけた事実、みたいなニュアンスのようです。
参考)http://harvestresearchgroup.com/pdf/Insight_vs_Findings.pdf

ドキュメントの体裁は、ワンフレーズのコピー+本文+引用+写真が標準形で、わりとシンプルなレイアウトです。さすがにInDesignとかで整形していそうですが、Mac使いならPagesでも比較的近いフォーマットで資料化することはできそうです(目下トレースして研究中。PowerPointの縦置きは厳しいし、Wordではさすがに無茶なので。。)。写真もサイズを何パターンか決めて、トリミングして敷き詰めているのが綺麗です。

7週間で200ページ、書ける?

この資料、2014年2月2日のリサーチINから、3月23日のドラフト完成まで、ちょうど7週間だったそうです。9人で7週間…

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そして、208ページのアウトプットの素材は

  • 2,245のノート
  • 14,500の写真
  • 21のフレームワーク
  • 25の動画

とあります。ノート2千以上…(付箋の枚数っていう感じかな)

大量のリサーチをまとめる時には、「発見」を整理する苦労と、それを「記述(執筆)」する苦労、2つの異なる苦しみがあると思います。私が苦手なのは、後者です(笑)。

実は今、”DESIGN IT! w/LOVE” の棚橋弘季さん(この書き方でいいのかw)と一緒のプロジェクトにいるのですが、棚橋さんの「言語化力」はすごい。PowerPoint 横置き80ページ相当の資料を、ほぼ2営業日で緻密に記述していたのには、びっくりしました。頭でぼんやり分かっていたり、箇条書きの骨子には落とせることでも、読んで分かる文章で表現するのは、本当に難しい…。

この「2,245 Notes」を見て、本棚から久しぶりに引っ張り出したのが『ワインバーグの文章読本』です。

ワインバーグの文章読本
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ジェラルド・ワインバーグの文章術指南は、「自然石構築法」の名の通り、「石(文章の断片)」を積み重ねて文章を組み立てていくやり方。この本はどちらかというと作家を目指す人に向けたものだと思いますが、レポートの作成も、いわばノンフィクション作家が本を書くようなもの。長い文章を書くことは、本当に日々トレーニングを続けないと、できるようにならなさそうです(と言ってやはりブログ書かなきゃって方向に落ちていくという。。)。まずはEvernote辺りをしっかり使って、「文章の断片」の形で書き溜める習慣づけから始めないと。。

もちろん、文字よりも一目見た時の情報量が多い「写真」も大事。
大量の素材の山の中から、宝探しのようにインサイトを導く作業は、苦しいけれど本当に刺激的で、喜びに溢れた仕事だと思います。

新たな「調査」の地平へ

クリエイティブの仕事における「リサーチ」は、直接何かを生み出すわけではないけれど、「確からしいスタート地点に立つこと」や、「ぶれない顧客理解を制作メンバーと共有すること」を通じて、クリエイティブの力を最大限引き出すための活動だと思っています。

大量の「事実(特に、文献の引用ではなく、現場の生の情報)」に触れ、それを記録すること。そして、それをドキュメントとして整理していくこと。
7週間・9人・23インサイト・200ページは高い目標ですが、frogに負けないように(!)、気づきに溢れるリサーチへの挑戦を続けていきます(言っちゃった!)。

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photo credit: Lívia Cristina via photopin cc

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