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ロジカルになりたいなら、言い切るリスクを取ろう

論理的であることは、あらゆる仕事の「基礎力」の一つだが、身につけることは容易ではない。 しかし最近、論理力を鍛えるトレーニングの一つは「文章を書くこと」、特に「言い切る(断定する)」ことだということに気がついた。

このことを教えてくれた、ライター古賀史健さんの著書『20歳の自分に受けさせたい文章講義』を紹介したい。 単なる文章術だけではなく、ものごとへ向き合う「スタンス」を指南してくれる本だ。

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

断定:リズムのいい文章を書く方法

古賀さんがこの本を通じて主張する「いい文章」は、「リズムのいい文章」。まず、この主張にとても共感した。ぐいぐい読んでいける文章、読後感の爽やかな文章は、例外なくリズムが良いと思う。 そして、「どうすればリズムのいい文章が書けるか」という問いに対して、『断定、言い切ってしまうこと』という方法を掲げている。

  • なかなか態度を明確にせず、歯切れの悪い物言いに終始している文章は、どうやってもリズムが悪い
  • 断定の言葉にはそれ自体に勢いがあるし、切れ味がある
  • 切れ味の鋭さゆえのリスクが伴う
  • あまりに強い断定の言葉を持ってくると、強烈な反発を食らう可能性が高い
  • そんなリスクを察知してか、日常会話のなかでもなるべく断定を避けている人は多い
  • ただし、こうした言葉に含まれる微妙な “逃げ” や “保険” には、みんな敏感に察知するもの
  • 個人的にぼくは、みんな批判を怖れずもっと断定すべきだと思っている。(p99-103より抜粋)

断定。言い切ること。

これまで私が書いてきたブログ記事でも、「○○と思う」がずっと続いたり、「思われる」「らしい」「とのこと」でまとめるなど、ちょっと一歩引いた書き方が多かった。もちろんそれはそれで「合ってる」けれど、もっと断定して、リズム良く書く余地が残っているということ。これは本当に一つの文末表現を言い切り型にするだけでも「こわい」ことで、「ほんとにそれ言い切っていいの?」と考え出すと筆が進まなくなる(笑)。

でも、「言い切る」と決めた瞬間、もっと自分の発信することにコミットし、責任を持って、より良い情報発信ができるようになる。まさに「考えるために書く」「自信を持つために断定する」ことの効能だ。

それでは、どうすれば断定という刃を使うことができるのか? やはり、論理なのだ。
断定する箇所の前後を、しっかりとした論理で固めるしかないのである。 (p102)
(中略)
自信があるから断定するのではなく、自信を持つために断定する、というアプローチを考えてもいいのではなかろうか。

主観を伝えるために客観=「論理」を使う

論理的な文章を書くための構成として、本の後半では「主張・理由・事実」の三層構造、そして「自分でツッコミ(反論)を入れ、そのツッコミに対して再反論していく」という方法を教えている。

  1. 主張
  2. 理由(なぜなら…)
  3. 反論(一方…)
  4. 再反論(しかし…)※3,4リピート
  5. 事実(実際に…)
  6. 結論

シミュレーション的に自分の意見の「逆」を想定する…といえば、ディベートの進め方がそう。相手がいるディベートに対し、文章を書くことなら、自分ひとりでも「違う意見」を想像し、対話を重ねることができる。これは案外簡単で、かつ、骨が折れる対峙だ。「三手先を読む」ような文章の組み立て方は、詰め将棋やチェス、カードゲームにも似て、難しくも楽しい。

そして主張が明確になればなるほど、「逆主張」も明確になる。 「逆主張=真逆の一般論」を起承転結の「転」に持ってきて、文章構成を「転」から始めれば、面白そうな文章になる。

こうやって主張と逆主張を行ったり来たりしながら、理由と事実を整理していくのは、とても良い思考トレーニングになると思う。 (でもこの記事は「この本良いよ!」と言いたいだけで、別に「良くない」という再反論を想定していたりはしない(笑))

ディテールにこだわってリアリティを出す

「リズムのいい文章」=「論理的な文章」を書く方法の中で欠かせないのが「ディテール」のこと。この本の表現でいえば「”面倒くさい詳細”を描写すること」だ。

文章は “面倒くさい細部” を描いてこそ、リアリティを獲得する。
そして “面倒くさい細部” の描写によって得られたリアリティは、読者の理解を促し、文章の説得力を強化するのだ。(p143)

私にとっての文章修行の師である、ナタリー・ゴールドバーグの書『魂の文章術(原題: Writing down the bone。邦訳絶版)』でも、ディテールを緻密に書いていくことは修行の中心に位置づけられている。ものごとのディテールを観察して(あるいは、想像して)丁寧に言葉にしていくのは、けっこうつらい過程だ。

そして、論理的な主張をする上で、「理由」や「事実」の説得力は、ディテールの精度にかかっている。 曖昧なディテールや、そこでの「嘘」は、主張の土台を揺るがしてしまう。ディテールを丁寧に扱う習慣は、普段から「主張」の説得力を増してくれる。

「面倒くさい細部」を語らないと、文章のリアリティは生まれない。しかし、細部の描写に失敗すると、文章のリアリティは総崩れになってしまう。
細部をどれだけ大事にできるかは、文章を書く上で最重要ポイントのひとつと考えて良いだろう。(p209)

ロジカルであることは、とてもリスキーで、めんどくさくて、大変なチャレンジだ。

でも間違いなく、相応の「リターン」はある。 論理力はプレゼンテーションでも、デザインでも、その他あらゆる仕事に欠かせない「コアコンピタンス」の一つだ。「使える武器」である論理力を鍛える手段が、こうやって文章を書く日常の中にあるというのは、朗報だと思う。

関連情報

まもなく2/26に、ミリオンセラーとなったアドラー心理学の解説書『嫌われる勇気』の続編、『幸せになる勇気』が発売される。Cakesでのサマリー公開も始まっているが、古賀さん扮する(?)「青年」のドラマチックな語り口と、冷静で穏やかな「哲人」の対話篇は健在。アドラーの主張がどんな「ディテール」で展開されていくのか、とても楽しみだ。

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII
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