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やってみよう!ステークホルダーマネジメント

「ステークホルダーマネジメント」って、一体何をすればいいんでしょうか?

いかなるプロジェクトでも、多様な利害関係者(ステークホルダー)が関与します。PMBOK®では、第5版になってステークホルダーマネジメントが「10番目」の知識エリアとして切り出されました。それだけ重要で、難しく、多くの技術と経験を必要とする領域です。

私は2016年3月26日、PMI日本支部主催『ソーシャル・ステークホルダーマネジメント実践』ワークショップに参加しました。 社会課題の解決をテーマに、行政・企業・NPOの3セクターが利害を超えて協働する… という文脈を想定した「ソーシャルPM」の分科会ですが、普段の仕事でももれなく使える(むしろ今日からすぐ使いたい)学びばかりでした。その一端を紹介しながら、ステークホルダーマネジメントの基礎的なフレームワークをみていきます。

まずは、ステークホルダーの分類と可視化

ステークホルダーマネジメントの第一歩は、関係者を全て洗い出すこと。 ここで、いわゆる組織図だけではなく、各人物がプロジェクトに対してどのような立ち位置にいるかを定量化します。具体的には:

  • 賛否(プロジェクトの成功に肯定的か、否定的か)
  • 関心度(当事者に近いか、利害関係が強いか)
  • 影響度(リスクの大きさ。プロジェクトにネガティブな影響を及ぼすおそれがあるか

といった視点で、一覧表に記入していきます。

list.png

適当に書きました(賛否はマイナスがPositive)

この一覧をもとに、4象限(2×2)のマトリックス(演習では縦に関心度、横に賛否)でマッピングしていくことで、対応優先度を見える化したり、「組織は違うけど以外に立ち位置が近い人々」を発見したりすることにつながります。

体制図や「名前一覧」に留まらず、一歩踏み込んだ「利害」の可視化をすることで、リスクを事前に察知し、スピーディに対応を取れるようになります。

「動けない理由」にフォーカスした、人と組織の変革

ステークホルダーといえば「外部」ばかりに目が行きますが、その大前提として必要なのは、『チーム』のマネジメントが盤石であること。(諸葛孔明も蜀の国力が疲弊していては北伐にいけないわけです(謎))

演習では、課長補佐職にある主人公が、「抱え込みがちで権限移譲が苦手な部下の係長をメンタリングして、チームメンバーにもっと仕事を渡させる」という(生々しすぎる)主題を用い、『免疫マップ』というツールを使って、行動変容を促す方法を体験しました。免疫マップはキーガン『なぜ人と組織は変われないのか』という書籍で紹介されている、組織変革のフレームワークです。

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免疫マップは、「目標を掲げたのに、目標を邪魔する行動を取ってしまう背景には、隠された【裏の目的】がある」という考え方から、

  • 改善目標
  • 阻害行動
  • 裏の目的
  • 強い固定概念

の4つの枠を埋めていきます。

immunitiy-map

『なぜ人と組織は変われないのか』Kindle版 No.2192 より図版引用

…実はフレームワーク体験で一度自分自身の課題(なかなか実現できない目標:たとえば「毎日穏やかな笑顔で働く」)を使ってやってみたのですが、私的な問題の「改善目標」を正確に書いたり、「裏の目的」や「強い固定概念」に向き合うのはものすごく困難。演習でやったように、上司がメンタリングツールで使うとか、客観的な誰か(配偶者とか)と対話しながら免疫マップをつくることで、気づきにくい「行動のヒント」を見つけることができるでしょう。

この分析を下敷きに、次は『目標への道のり』として、

  • 最初の一歩
  • 際だった進歩
  • 成功の指標

という枠を同じように埋めていきます。真の原因さえ見えれば、あとは一歩一歩潰していくだけ。こうした「真の原因」をあぶり出すフレームワークは、組織内の変革を促すのに強力なツールになります。

(3) 人物ごとに、リスク対応戦略を練る

次に、外部ステークホルダーのマネジメントでは、一覧化した中から特に重要なステークホルダーを特定し、それぞれの人に固有の立場や価値観をもとに、プロジェクトにおける「リスク」の洗い出しと、その対応戦略を立てていきます。

risk

ここで留意すべきは、ひとを動かすのに「権力」や「お金」以外に、きわめて多様な動機付け要因(無形の報酬)があり、それを効果的に組み合わせて使う必要があるということです。

演習ではコーエン『影響力の法則』で紹介されている「カレンシー(通貨)」のリストを用いて、どのような作戦でその人に動いてもらうかを検討しました。カレンシーの例には

  • ビジョン(そもそもの目的や得られる成果によって促す)
  • 評判(周囲からよく見られることを目指す)
  • 需要・一体感(親しみ、友好的な態度・関係性)
  • 感謝(個人的な恩義、感謝を伝えることで動いてもらう)

などがあり、「どれが効くか」を予測するには慎重な分析が必要です。しかし『活用できるカレンシーの種類』のリストを眺めることで、動いてほしい人に動いてもらうには、多様なアプローチがあることを思い出すことができます。

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まとめ:フレームワークを腹落ちさせるには

以上見てきたように、ステークホルダーマネジメントには「いつも使えるいくつかのフレームワーク」があります。時間をとってワークシートに描いていくのは面倒ですが、特に複数人での認識合わせのためには、可視化してディスカッションすることがとても効果的だということを学びました。


ところで、講師の中谷英雄さんは、ユニシスや信託銀行を経て、「3000人月」規模(!)のPMを張ったこともあるという、50代の大ベテランPM。中谷さんの軽妙な(でも抽象度は高い)セミナーでは、本当に多彩な「参考書籍」からフレームワークが紹介されていて、「やっぱり読書って大事だ」と思いました(小並感)。

ただ、本って流して読んだだけでは全然使えなくて、勉強会でリアルなケーススタディをやって体験するか、とにかく仕事の現場で活用してみて(、失敗して)、はじめて技化・腹落ちするものです。フレームワークを試す機会なんて本当に限られているので、数少ない「実践の機会」は逃すことなくチャレンジをしていきたいです。

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