Pages Navigation Menu

For Creative Communication

読み解いてみよう!舛添都知事の海外出張費内訳

舛添要一・東京都知事の海外出張費が高すぎる、という話が、このところしばらく盛り上がっています。 この問題、都議会議員おときた駿さんが先月中旬にブログで指摘していたのを読んで、なんとなく興味を持っていました。

当初この話題がニュースサイトで話題になった時、内訳として「出張者及び経費の詳細について(パリ市・ロンドン市出張)」という文書が紹介されました。それによれば、20名5泊7日の出張費総額が5,000万円、うち飛行機代が1500万、ホテル代が1000万、その他賃借料等2500万など…

00_uchiwake

しかし実は、もっと細かい明細が開示されています。おときた議員が「公文書開示請求」を行い、その結果開示された80の文書(787枚、計187MB)が、今もdropboxで公開されています。

dropbox

さまざまな憶測が飛び交う中、一次情報にあたることが重要だろうと考え、この「舛添知事パリロンドン出張開示請求資料」を拾い読みしてみました。この記事では膨大な資料群の中で、【特に面白い3つの文書】を紹介しつつ、出張費のコスト構造について見ていきたいと思います。 (これ連休中に取っておこうと思っていたのに、昨日の朝見始めたら面白すぎて引っ込みが付かなくなってしまった)

「旅費」の内訳はどうなっているの?

最初に目を通したいのが、まさに1つめの資料、《1政外管第287号「知事の海外出張フランス共和国(パリ市)及び英国(ロンドン市)について」》です。

この書類は、9/15に起案された一連の出張に関する基本的な「企画書」のようなもの。記載されているのは

  • 出張の目的
  • 日程
  • 予算
  • 出張者役割分担
  • 各職員ごとの旅費内訳

といった項目です。驚くのはひとりひとりの飛行機代・宿泊代が個人別に細かく出ていることです。おときた議員は「単価、係数が黒塗りで精査できない!」とお怒りですが、項目別の明細があるだけで、随分想像がつきます。

気になる知事本人ですが、

01_ryohi

…調べたことなかったけど、JALの東京-パリ便のファーストクラスって本当に往復250万円とかするんですね!!(そしてファーストクラスには割引がない)

02_jal

コンラッド(ヒルトン系列)のスイートって本当に一泊40万とかっていうプランが存在するんですね!!(いま英国ポンドは150円ぐらいまで下がっている)

04_suite

そして、その他の一般職員17名(2人あとから追加されたので、9月次点では17名分しか出ていない)の飛行機代・宿泊代と、「出張者役割分担」に記載された担当領域をまとめた表がこちらです(GoogleDocsで公開中。キャプチャはExcelの条件付き書式使ってます)。

03_ichiran.png

「主担当」の領域や関係性は推測なので誤りがあるかもしれませんが、秘書チーム、広報・報道チーム、パリ先遣隊、ロンドン先遣隊など、複数のチームが関与していたこと、5泊7日というけれど前入りのメンバーも多く、うち4人は7泊9日の長期日程だったことなども見えてきます。旅費は基本的に人数×単価で比例的に支出が増えるし、団体の人数が大きくなればなるほど移動や手配のコストが嵩みます。この「出張者」の精査は、特に重要な視点になると思います。(だから最近の出張で主張されている「経費節減のため人数を絞った」というのは当然のアプローチ)

※ちなみに担当課長って不思議な役職ですね…

旅費の増額申請はどんな理由なの?

次にじっくり読みたいのが、《5政外管第304号「海外出張に伴う経費の増額について」》。条例の出張費上限を超える支出を申請する書類で、「なぜ知事は高級ホテルのスイートに泊まるべきか」を明文化しています。

06_reason2.png

この資料に、報道でも見かける「パリ市をはじめフランス政府の要人及び海外メディアとの急な面談、会見の可能性があるため」などの表現が出ています(会見の予定があるか・会見の実態があったかではなく「あるかもしれない」から、という理由)。他に目に付く理由記述としては…

  • 限られた日程の中で、各訪問への移動が容易であり、至近な場所に立地していること
  • 知事のセキュリティを確保するため、ホテル自体が高い安全性を有し…(略)
  • 緊急事態発生時でも東京都事務局と媒密な連絡を取れる設備が整備されている

など。いろいろなところに「可能性」「安全性」「緊急事態発生時」など、『もしものことを考慮して』というニュアンスの記述が見られます。リスクを少しでも回避するために、高額なホテルを選ぶというロジックです。これを踏まえて、条件に合致する高級ホテル3軒のスイートルーム料金を比較し、「最も低料金」なインターコンチネンタルとコンラッドを選定しています。

05_reason1

ここで先ほどの1政外管第287号に戻ると、末尾に一般職員についても(全員分)出張費上限を超える支出の申請がされています。まず知事のスイートルームが決まった上で、「突然かつ想定外」の指示に対応するため、全員同じホテルに泊まることが必要、とされています。先に宿泊先が決まっていて、そのホテルの空きがある普通のプランを選んだら1人1泊6〜8万円かかった、ということですね。

この理由付けが、山ほどの稟議押印を経て承認され、費用が増額されています。単価の妥当性云々というより、この判断に至った考え方、価値観、リスクの捉え方を問うていく必要がありそうです。

旅行会社への委託費はどうなっているの?

目に付く大型の支出は旅費ですが、旅行会社への委託費も総計1600万円程度とけっこうな額です。 《26財経二契第404号③》は、旅行会社委託の入札結果報告書で、なんと応札3社の全詳細見積が開示されています(!)。公的機関向けのビジネスって透明性高い!

これによると、日通旅行・JTBコーポレートセールスよりも500万円近く低い価格で入札した近畿日本ツーリストが落札・受託しています。この金額差は、手配力の違いなのか何なのか興味深いですが、3社相見積を経て安いところに出すという意味では妥当なプロセスを踏んでいるように感じます。(ところでこれ企画当初の契約目処額が倍の3000万で計上されていたのはどういう見積なんだろ…)

06_uchiwake

委託料の内訳は、

  • 現地案内人(ガイド)が250万円×2都市(一日1〜4名とのこと)
  • 車両借り上げ 1台50〜100万円×4台×2都市(一日1〜4台とのこと。主に貸切バスですね)
  • その他諸々備品、携帯電話通話料など

という感じです。やはり移動人数が多いため、ガイドや車のコストも比例してかかるのと、これらの単価には旅行会社の手数料(職員に代わって手配する人の人件費)がぼーんと乗っているはず。

委託料部分については、単価が黒塗りなので見えづらいものの、項目ごとの精査はできそうです。一方、十数万円単位の削減を積み上げても、全体の費用圧縮にはつながりにくい印象も受けますし、旅行手配を内製化して外注費を抑えるのは、かえって職員の人件費がかさむ懸念もあるため、複雑な検討になりそうです。

ということは、費用削減の方向性は…?

先週4月21日に設置された検討委員会が出張費の精査を行い、6月までに結論を出すとのことで、公式の委員会がこれらのデータをどう読み解くのか興味があります。

一般に、コストを減らしたいと思ったら、「スコープ(やること)」を減らすか、「スケジュール」で調整するのが現実的な解決策です。たとえば…

  • 「せっかくの出張機会だから」と、あれもこれも、あの人もこの人も、と欲張って規模を大きくせず、宣伝周りや必ずしも知事随行じゃなくてもいい領域を出張プロジェクトから外し、極力目的を絞ることで、関与する人数が減らせるかも
  • 複数の先遣隊が準備している部分や、補佐業務と旅行会社委託業務の重複する部分を、極力外注や現地協力会社などに任せ、出張職員の役割を減らせるかも(複数人でやっている業務を1人+外注でできれば旅費が減る)
  • 「分刻みのスケジュール」で詰め込むのを見直し、比較的余裕を持ったスケジュールを組むことで、滞在日数は伸びても1日あたりの費用を抑えられるかも

…といった視点があるでしょうか?

あとは、結局「リスク(○○かもしれない)」対策で費用を積んでいる側面。保険料をいっぱい払って安心を買っているような印象を受けました。セキュリティ面は別として「突発的な何かがあっても、出張中だし即対応できなくてもしょうがない」と割り切れば、必ずしも全職員が知事と同じ高級ホテルじゃなくても済むし、携帯の通話料が200万もかからないかもしれません。ただこれは、権限移譲などを含む「組織」の課題もあり、「何かあったとき即応しないといけない」という価値観(や都民のある面の評価)の問題もあり、解きほぐすのは容易ではない気もします。

表面的な「無駄な支出かどうか」の議論ではなく、なぜその支出判断がなされ、その考え方をどうすれば変えられるのか… という視点で、議論がされることは期待できるのでしょうか。

日本を代表する都市・東京の「顔」として、舛添都知事が諸外国で行う「外交」活動が、これからどのような「成果」を生むのか、出張先各都市の名前を頭の片隅に置きながら、注視していきたいと思います。

5238554034_3e4fdabd94_b

*Featured Image by Moyan Brenn on CC-BY 2.0

One Comment

  1. これ、備品って色々手配されていますが、そういう設備が有る在外公館・大使館の利用は出来ないんでしょうか??

Trackbacks/Pingbacks

  1. 海外出張経費について、ロンドン市から返信あり!文字通り、舛添知事の豪遊とケタ違いだった… – NHK.io - […] 読み解いてみよう!舛添都知事の海外出張費内訳 http://irritantis.info/2016/04/masuzoe_expense/#.VyNxQLJ0fXA.twitter […]
  2. ■社会|舛添都知事、いよいよ禿のメッキが剥げてきたか | 欲望の翼から - […] 読み解いてみよう!舛添都知事の海外出張費内訳 […]
  3. 海外出張経費について、ロンドン市から返信あり!文字通り、舛添知事の豪遊とケタ違いだった… | 投資家速報 - […] 読み解いてみよう!舛添都知事の海外出張費内訳 http://irritantis.info/2016/04/masuzoe_expense/#.VyNxQLJ0fXA.twitter […]

コメントを残す