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For Creative Communication

トシヤさん、「企画力」の上げ方教えてください。

ディレクター、プランナー、プロデューサー、マーケッター、営業…
「企画」という能力は、課題解決を仕事にするけっこう多くの人に求められるスキルだと思う。広告業界とか、いわゆる「クリエイティブ」な業界にいなくても、企画のプロから学びたいことは多いはずだ。

なんとなく企画クリエイティブの仕事をしたいと思っている人のなんとなくをなんとなくじゃなくする本 なんクリ

『なんとなく企画クリエイティブの仕事をしたいと思っている人のなんとなくをなんとなくじゃなくする本』(通称「なんクリ」)は、2014年10月に刊行された(最近重版がかかった)、私が仕事をするのに常に手元に置いておきたい本の一つ。この本の著者である福田敏也さんが、2016年5月12日、「出張777塾 /「なんクリ」の著者が届ける企画仕事の『考え方の考え方』」と銘打って、京都・五条のMTRL KYOTOで2時間ほどのトークセッションを行った。この時間に語られた、トシヤさん流の「企画力の上げ方」についてまとめてみる。

企画の本質は、「変化」「差分」をつくること

まず、「企画の仕事」の本質について。
書籍44ページでは、企画の仕事=『時代との向き合い方を設計すること』と定義されているけれど、少し違った言い方で、トークセッションの中で繰り返されたキーワードがある。

《基準点と差分》だ。

《基準点》とは、これから取り組む「お題(テーマ、対象商品、あるいは顧客課題)」と向き合う上での出発点。認知向上や売上アップなどのゴールを達成するために、「何と比べて変化・差分を生み出す必要があるのか」「これからやることは、何と比べて新しくなくてはならないか」をはっきりさせることが、《基準点》に向き合うということだ。

たとえば、360°形状のFabCafe Brand Bookは、グローバルで闘うためにあえて「世界のBrand Book」を基準点に選んで、世界中のブランドブックを比較研究し、少ない予算の中でクリエイティブ系のアワードを獲って認知を上げる戦略をとって成功した(NY ADC Cube, D&ADそしてカンヌを総なめ)。

たとえば、ルパン3世が渋谷のモヤイ像や大阪の食い倒れ太郎を盗み出したりした ”LUPIN STEAL JAPAN PROJECT” の基準点は、「ちょっと古いアニメ」という世の中的なとらえられ方(既存イメージ)。そこから《痛快なダークヒーロー》という本質的な価値を変えずに、新しいイメージを生み出すことにチャレンジし、若者層を新たに開拓して、関連商品の売上げを大きく伸ばした。

[渋谷]街頭ポスター - 犯行予告 01

そう、「基準点」というのは、プロジェクトにおけるチャレンジポイントの設定なのだ。仕事を通じてプロとしての成果を出しつつ常に成長したいならば、ひとつひとつの仕事でチャレンジを続けることが絶対に必要だ。

ここで大事なことは、「身の丈に合った比較対象」を選ぶこと。常に世界と勝負することが前提ではないし、土台無理な目標(コミットできない目標)を立てても良い仕事はできない。どの範囲で差分をつければオッケーなのか。同じ業界の中での差分、国内の事例との差分、世界の事例との差分…。

基準点が定まれば、次にその基準点のことを徹底的に調べることが必要。いわゆる「現状分析」は、明確な基準点を意識して行ってはじめて、ミッションとコンセプトを説得力をもって橋渡しできる。この示唆をもとに、基準点からの「差分」を生み出すアイデアを絞り出し、その実行方法を検討する。

これで、「企画書」の一丁上がりだ。企画書は、たとえばこんな構成になる。

  1. 業務(ミッション)
  2. 業務基準(何との差分を生み出すのか)
  3. 調査(基準点は一体何なのか)
  4. コンセプト(どんな差分を生み出すのか)
  5. 実現方法(どのようにしてその差分を生み出すのか)

「そもそも」を遡って、本質的な価値を見極める

良い基準点、良いコンセプトを考える上で効果的なのは、考えるテーマの「そもそも」に遡るアプローチだ。

「なんクリ」194ページでは、『○○って何だっけカルテ』という方法が紹介されている(トークでは「デザインって何だっけカルテ」って呼んでいた)。

『○○って何だっけカルテ』は、以下の流れで考える方法だ。

  1. その生まれに遡る
  2. そのデザイン構成要素を分解する
  3. その進化のプロセスと、その進化の引き金になった時代のニーズを分解する
  4. その進化の流れに即してリデザインの可能性を考える

歴史を学ぶことで、対象の「オリジン価値(その商品が生まれた理由)」に向き合うことができ、そのオリジン価値が「今の時代」とどう向き合うべきかを考える素地ができる。書籍では、《切手》を題材に、時代ごとの変遷をまとめ、リデザインの設計をする例が紹介されている。

「そもそも」に遡ることが有効なのは、「モノ」に限らない。BtoBや大学の仕事をするとき、沿革や創設理念をまず確認するクセがついたのは、リクルート出身の同僚のおかげだ(というか、これを勉強していなくてクライアントに激怒された痛みが大きいかもしれないけれど…)。そのサービスがなぜ始まり、なぜ受け入れられ続け、どのように変化してきたのか。その背景の中に、本質的な価値と「ジャンプ」のアイデアが眠っている。

「なぜ」の言語化を習慣にする

こうした企画の考え方の毎日のトレーニングとして有効な方法の一つが、「なんクリ」90ページに登場する「なぜのDiary」だ。

なぜのDiaryは、文字通り日記帳やEvernoteやメールを用いて、《書き方は自由です。その日に発生した「なぜ」を文頭に書いて、その理由の解明は、時間があるときに埋めていきます》という方法。

ところで、本には《どんな「なぜ」に注目するべきか》が書かれていないので、正直いまひとつピンとこなかったのだが、実は隠れた基準をひとつ加えると、このトレーニングはもっと明確になる。

『自分が感動したこと』に目を向けることだ。

自分が心動かされたクリエイティブやサービスに対して、その感動の「理由」を言語化すること。

  • なぜ、これが気になったんだろう
  • なぜ、作った人はこうしたんだろう
  • なぜ、これが受ける/バズるんだろう
  • なぜ、自分は心動かされたんだろう

この「なぜ」思考を通じて、対象の本質価値に目を向け、「基準点と差分」を考えることを繰り返していく。132ページの「名作の分解」メソッドも同じ軸だと思う。

最後に:「企画力を上げる」修行のすすめ

この話を聴いて、ひとつ自信がついたのは、ここ数年で衝動的に書いてきたブログ記事——早稲田大学バルミューダのWebデザインを「勝手に分析」するという行為は、企画力を磨くのに絶好のやり方だったということ。なかなか、納得いくまで書きたい対象が見つかることは少ないけど、日々「感動」にアンテナを向けることで、企画修行の「お題」はいつも与えられる。(こういう議論、ひとりじゃなくて仲間と一緒にやれたらもっと楽しいだろう)

いつも「なぜ」を問うこと。「そもそも」に遡ること。そしてその過程を「言葉」にする訓練を重ね、現場の仕事において、明確な言葉でアイデアを説明すること。この繰り返しが、「企画力」を上げるのに必要な方法論だと学んだ。

もやっとした「クリエイティブ」の仕事の中で、ある種の「筋トレ」メニューがあるというのはありがたいことだ。これからも、「なぜ」と「そもそも」に向き合うことを続けていきたい。

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