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インタビュー好き必見!ロフトワーク流『デザインリサーチ実践ガイド』

2017年2月6日から、ロフトワークが経産省の受託プロジェクトで作成した「高齢化にまつわる基礎調査報告書」と、そのプロジェクトから生まれた手法解説書『デザインリサーチ実践ガイド Design Research 101』を、無料(Creative Commonsライセンス)で公開しています。太っ腹!

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※ちなみに私はロフトワークのメンバーですが、このプロジェクトには全く関わっていません。残念すぎる…!

内容や経緯は公式プレスリリース事例記事に詳しいのですが、このプロジェクトは元frogのリサーチャーJan Chipchase(ヤン・チップチェイス)と、彼の会社Studio DのVenetia Tayががっつり参加していて、書籍『サイレント・ニーズ』にも描かれている様々な方法を取り込んでいます。『デザインリサーチ実践ガイド』は、まさに本プロジェクトの「マニュアル」であり「ジャーナル」。ヤンの手法については、過去このブログでも2本ほど記事で紹介しましたが、書籍で紹介されている方法論を実際に日本のメンバーが体験した「現場の言葉」で綴られた、文字通りの実践編です。ぜひ『サイレント・ニーズ』と並べて読んで欲しいドキュメントです。

サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る

Crane Projectの偉大なるメンバー、特にプロジェクト最年少メンバーにして、実践ガイドの執筆を取り仕切った神野真実さんに感謝と尊敬をこめて、ガイドのみどころを紹介します。

p20 – 一棟借りポップアップ・スタジオの活用

リサーチ対象の地域に宿泊・生活するとともに、現地に「スタジオ」を借りて、プロジェクトメンバーと生活をともにしながら、生活文脈の理解を深めつつ強力なチームビルディング効果を得られる、「ポップアップ・スタジオ」という手法。耳慣れないこの方法を想像するのに役立つ、実際のプロジェクトサイトで借りた建物の「間取り図」が紹介されています。

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和室4室を広々使って、ワークスペースや道具置き場、チェックリストを貼る場所などを用意。和室の4面が「Data Wall」という付箋を貼る場所になり、「Media Center」コーナーではカメラのデータをHDDにバックアップ。メンバー間のカギの受け渡しでロスがないように、など、この空間デザインに数多くのTipsが凝縮されています。

中国・成都では最初ホテルを使おうとしたけどうまくいかなくて場所を変えた、というエピソードも面白い。Airbnb全盛のいま、こういう立体的なプロジェクトスペースを比較的容易に得られることで、とてもクリエイティブなプロセス設計が可能になるわけです。

p39- 統合(Synthesis)プロセスの詳細

ワークショップで「発散はするけど収束がうまくいかない」というのはよく聞く話。大量のインプットを扱うデザインリサーチプロセスでは、段階的に統合を行う方法が提示されています。

synthesis

  • Small Synthesis : 地域ごとの整理
  • Axis : 「軸」を見つけるブレーンストーミング
  • Framework : 図解による掘り下げ
  • Syntheis : データウォールを見ながら気づきを集約

インプットを”Data wall”と呼ばれる「付箋紙をはりまくった模造紙」にまとめて張り出し、それを見ながら議論する。「どういう軸で整理するか」にも無数の仮説・考え方・アイデアがある中で、行ったり来たりしながら「これ!」と思える着地点を皆で探っていくプロセスです。

Crane Projectにクレジットされているメンバーは、ロフトワーク、Studio D、企業パートナー、学術パートナーを全部合わせて実に16名。小回りがきく2-3人のユニットと異なり、これだけ大人数で気づきを集約していくためには、考え方のフレームワークを用いることが絶対に必要です。難易度が高いだけに、ノウハウを活用してうまくハンドリングできれば、他にできない稀有な仕事ができるんだと思います。

p47- 現場への姿勢と仕事のカルチャー

“Attitude リサーチへの態度” と題された最終章は、調査手法ではなくメンバーの「心構え」をまとめたパートです。いわゆる、「精神論」です(笑)。とはいえ、チームワークや上質な議論、チーム内外のコミュニケーションを円滑にするために必要なノウハウが詰まっていて、どれも「行動できる」指針になっている。

attitude

  • Building trust : 信頼構築
  • Zoom Out/Step Back : 一歩引いてみる
  • Embrace/Reduce Ambiguity : 曖昧さとうまくつきあう
  • Hard Stop : 終わり時間を厳守する
  • Team Ability : チームのパフォーマンスを最大化する
  • Changing to Proper Way : 常に最良の環境に変えていく
  • Snow balling : 雪だるま式(芋づる式)に広げる
  • Option (Pros/Cons) : 選択肢をよく検討
  • Flexibility : 柔軟に
  • Done is better than perfect / Get things done : 終わらせることで前進する

どれも、デザインリサーチ固有のTipsではなく、大概の仕事に役立つ話ではないでしょうか。この辺りのスタンスは、チームを越えて会社のカルチャーにも関係します。例えば「完璧を目指す」カルチャー、「ミスを極力しない」カルチャー、「曖昧さを許容し柔軟にどんどん進めるカルチャー」、どれも個性が異なりますが、ロフトワークのメンバーはだいたい共通して、ここに挙げたようなAttitudeを(意識しているかはともかく)取ることを好む人が多い気が。こうして言語化されたリストをみながら、一つずつ行動を変えてみると(たとえば「終わらせる」ということ一つとっても)、徐々に仕事の仕方・人との向き合い方が変わると思います。


他にもインタビューの細かい進め方や備品のリスト、”Deblief”という日々の棚卸しノウハウ、「文章化」のステップなどを含めて、実践ガイドは横置き全53ページのボリューミーなPDF。そして「本編」の”Transformation”リサーチレポートは、ぎっしり183ページ!(読み応え十分すぎる…)。

Studio Dが同じようにフリーで公開しているミャンマーのプロジェクトレポート、”Afford Two, Eat One” や “Paddy to Plate” (どちらも英語のみ)とも見比べながら、ぜひ圧倒的なデザインリサーチの世界に浸ってみてください。

《リサーチガイドのダウンロードは公式プレスリリースからどうぞ》

【過去記事】

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