小沢朋子 part1 かわいいだけのフードデザインはしない

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西村佳哲さんがファシリテートする『インタビューのワークショップ』で一緒に学んだ仲間の一人、小沢朋子(おざわともこ)さん。しかしその時は、彼女が「食の職人」だということには気がついていませんでした。フードデザイナーの彼女がなぜ、インタビューを学びに来ていたのか…。そのヒントは、「モコメシ」の考え方に隠れていました。(インタビュー:2011年2月)

出張料理でも創作料理でもなく、フードデザイン

――「モコメシ」は、ケータリングを中心に活動しているよね。お店を持たず、いろいろなところでごはんを供する仕事は「出張料理人」とも言えそうだけど、「フードデザイナー」という肩書きを名乗っているのはどうして?

小沢 確かに出張して料理はしてるけど(笑)。「デザイナー」って言っているのは、「クライアントのオファーがあって、それに対する答えを出す」というスタンスを大事にしているからなのね。、料理だけではなく、食べる空間やディスプレイも包含して、「食べるシチュエーションをデザインする」っていうのがコンセプトなの。料理人っていうと、和食とかイタリアンとか、「自分の料理はこれ」というものを持っているイメージがあるんだけど、私の場合は、イベントのテーマやコンセプトに合わせて、出すものも変えていく。

――フードデザインと「創作料理」の違いは?

小沢 創作料理は、「新しい料理を作る」ことに重きを置いているでしょ。私の場合、例えばあるイベントで用意した料理には、「ネギを焼いてニラを巻いただけ」(笑)というものもある。だけどこれは、料理単体のことではなくて、イベント全体のコンセプトから、素材と見せ方を考えた結果なわけ。ディスプレイもフードの内容も、イベントのコンセプトに沿ったものじゃないと意味がないと思っている。

――どういうプロセスを踏んで考えていくの?

小沢 事務的な連絡のあと、現場で打合せがあって、実際に担当者の人と顔を見ながら話をして、会場を実際に見ながら設備や諸条件を確認していく。それから、主催者側として、ごはんを食べる会をどういう雰囲気にしたいかを、聴く。主催者にあまりイメージがない場合は、こちらから提案することもあるよ。でも、最初はインタビューだよね。「どういうことやりたいんですか」って、最初聴く側だからさ。聴いた上で、提案。

――たとえばどんな提案を?

小沢 例えば、本屋さんで行われた、西村佳哲さんがファシリテートする丸一日のトークイベントで、その最後の交流会のフードを作ったの。
私自身、西村さんのイベントには何回か参加していて、いつも何かを教えられるというより、自分で噛み締めて、咀嚼して、考えるきっかけをもらうな、と思ってたんだ。だから、フードも噛みごたえのある素材を使った。するめとかビーフジャーキーとか。あごを良く動かして、脳に刺激を…みたいな。
それから、普段本を並べているアクリルの什器を現場で見つけて、それをディスプレイに使わせてもらったり。なるべく現場にある物を使って、そこでしか出来ないことをやる。

2011年2月、「ワークショップって何だろう?大学」

コンセプトが伝わりやすいデザインの追求

――練ったコンセプトは、どのくらい伝わるものなの?

小沢 きちんとデザインすれば、ちゃんと伝わるよ。もちろん、失敗することもあるけど…。この間、横浜であったアートイベントのケータリングでは、コンセプトを十分伝えるのに失敗しちゃって、「わー、かわいい」で終わってしまった。

――「わー、かわいい」で終わってしまうと…

小沢 やだよねぇ。かわいさだけを求めて、やってるわけじゃないから。そのイベントのコンセプトがあるからこそ、そのデザインなわけで、全く別のイベント、別のシチュエーションで同じものを出すかといったら、やらない。やる意味がない。モコメシは各イベントのコンセプトを汲んでるってことは、理解してもらえたほうが嬉しいよね。

その時はちょっと、食べる人とコンセプトが離れていたんだと思う。ここ10年間の横浜のアートシーンにおけるイベントの位置づけを表現して…というコンセプトを立てたんだけど、パーティーの参加者は個々のアートプロジェクトに関わっている人が多かった。だから、参加者のプロジェクトへの関わり方に比べてコンセプトが俯瞰的すぎて伝わりにくかったのね。コンセプトはもっと食べる人に寄り添うべきだと実感しました。

わかりやすいのが、もっといいデザインなんだと思う。「機能美」というか、ね。そこはすごく、前にいたインテリアデザイン事務所の影響が強いの。実直なデザインをするところで、「お前それ何のためにするんだ?」っていつも問われて、装飾的なデザインはすごく嫌われた。だからこういうフードのデザインでも、単なる「飾り」と思われてしまうと、ああ、足りないなって思うわけ。

» Part2 「独立――インテリアデザインから食へのシフト」 へ…

プロフィール

小沢朋子(おざわ ともこ)。1981年生まれ。フードデザイナー。インテリアデザイン事務所勤務時代から、「モコメシ」の屋号でイベントのフードケータリングなどを手がけ始め、2010年に独立。カレーを始め、さまざまなスパイスを活用した「スパイスごはん」を得意とするほか、ディスプレイ等を含めた「食べること」のトータルコーディネートを行う。
twitter: @mocomeshi
http://mocomeshi.org


About Satoshi Iritani

The Portrait of Hosting 主宰。2010年9月、西村佳哲氏がファシリテートする『インタビューのワークショップ』に参加したことを機に、インタビューの面白さに開眼。「入谷文耕堂」を屋号に掲げ、インタビューとウェブ制作のプロジェクトを手がける。 http://irritantis.info/author