小沢朋子 part2 独立――インテリアデザインから食へ

mocomeshi_3

「イベントのコンセプトを汲む」ことをコンセプトに、フードデザインを手がける小沢朋子さん。彼女の仕事のスタイルには、前職であるインテリアデザインの影響が色濃く出ています。今でも「インテリアデザインの仕事は好き」という彼女が、「モコメシ」として独立するまでには、どのような過程があったのでしょうか。

インテリアデザイン事務所からの独立

――前の職場を辞めるときは、どういうところで迷ったの?

小沢 一つは、金銭的なことだね。モコメシの仕事だけで日々のご飯が食べていけるのか…。でもね、「これで金銭的に独立できます」っていうところまで引っ張っていくとしたら、たぶんずっと迷い続けるんだろうなって思って。スッと踏ん切れる状態はきっと来ないと思ったし、モコメシをやりたいっていう気持ちはかなり大きくなっていたから、どこかで決めてしまおうかと。

もう一つは、その事務所を離れたら、大きいインテリアデザインの仕事はもうできないなっていうこと。前の事務所は老舗だから、いい仕事が来るんだ。ひとりだと、そういう仕事は絶対できない。 インテリアデザインの仕事は好きだし、 今もやりたくないわけではないんだけど、フリーランスでインテリアの仕事がそんなに頻繁に来るわけじゃないからね。

でも、ひとりでやりたくなったのかもしれない。大勢でやるインテリアデザインの仕事とモコメシは、けっこう対極にある。インテリアの設計は、いわば大工さんへのお手紙を書くところまでだけど、モコメシでは、私が直接お客さんと向きあう。お客さんと話して、直接反応が来る。ごまかしはきかないし、最終的に食べる人の顔が見えるっていうのは、すごく気持ちいいんだよね。

お金をもらうということ

――モコメシで食べていくということは、お金を会社からもらうのではなく、直接お客さんからもらうことになるよね。自分が作る料理に対して、材料費以上のお金をもらうということに、葛藤や抵抗はなかった?

小沢 始めた頃は、自主企画でお金をもらうことには、けっこう抵抗があったの。2009年の終わりに、はじめて自主企画のイベントをやったときの話をすると…。一緒に企画したお花屋さんの出身地に合わせた、八丈島の食材を使って、ドリンクと、サラダと、メインのプレート6品とカレーという内容。それで、1500円だったの!今としては破格というか、材料費で7、8割を占めるような値段設定だった。

でも、そのときにお客さんがすっごい喜んでくれたのが、けっこう自信になったかな。徐々に「喜んでくれてる」という実感が出てきて、抵抗感も少なくなってきた。料金設定については、「自分がお客さんだったらどうかな」ということを常に考えている。5千円だと少し多いかな、とか、自分が出す側だったら、これくらいいいかな、とか。状況によっても、変わる。

2009年11月、モコメシのよろずめし

「モコメシ(mocomeshi)」という屋号

――「モコメシ」の由来は?

小沢 トモコのメシで、モコメシ。

――ほかでもない「モコメシ」を屋号に決めたのはどうして?

小沢 そうね、ある意味、軽かったかもしれない。というのは、2007年の末にこの名前をつけたとき、私はこれを本業にしようとは思っていなかったから。その時は会社に勤めながら、忘年会のごはん作ってよー、とか、友だちの輪の中でやっていた。「よし、これであたしはがんばっていくぞ!で、屋号どうしよう…」という感じではなくて、どうせやるなら何か名前でもあったほうが面白いよね、というくらい。

でもね、この屋号は、すごい気に入ってる。覚えてもらいやすいし。「モコメシってなんでモコメシっていうんですか」って聞く人が結構いるんだけど、説明すると一発で「あー、なんだ!」って分かってもらえる。分かりにくさと分かりやすさの微妙なバランスが好き。この名前をつけたことで、それ以前にもやっていたホームパーティやカレー教室と、その後の活動とで、ちょっと意識は変わってきたかもしれない。

» Part3 「モコメシに訪れた三つの転機」
« Part1 「かわいいだけのフードデザインはしない」

プロフィール

小沢朋子(おざわ ともこ)。1981年生まれ。フードデザイナー。インテリアデザイン事務所勤務時代から、「モコメシ」の屋号でイベントのフードケータリングなどを手がけ始め、2010年に独立。カレーを始め、さまざまなスパイスを活用した「スパイスごはん」を得意とするほか、ディスプレイ等を含めた「食べること」のトータルコーディネートを行う。
twitter: @mocomeshi
http://mocomeshi.org


About Satoshi Iritani

The Portrait of Hosting 主宰。2010年9月、西村佳哲氏がファシリテートする『インタビューのワークショップ』に参加したことを機に、インタビューの面白さに開眼。「入谷文耕堂」を屋号に掲げ、インタビューとウェブ制作のプロジェクトを手がける。 http://irritantis.info/author