小竹治安 part1 「人間、好きやねんな。」

jian2

 2010年5月、『ことりっぷ 熊野古道』という旅行本の片隅に載っていた「霧の郷たかはら」に宿を取ったことが、小竹治安(しの じあん)さんとの出会いでした。その日はちょうど大雨で、古道歩きもままならない中、広間でノートを広げていたら声をかけてくれ、それ以来すっかり仲良しです。どんなお客さんにも明るく声をかけ、反応する人とはすぐに友だちのような感じになって、地元の人や他のお客さんとつないでくれる小竹さんを再度訪ね、あらためて話を聞いてみました。(インタビュー:2011年1月)

会う人全員に、周波数を合わせる

――治安さんはなぜ今、ホテル業という「おもてなし」の仕事をされているんですか?

小竹 うーん、人が好きなんでしょうね。人が笑ってくれたり、喜んでもらえたりすると、自分の精神が豊かになるよね。ギター弾いたり話したりして、その人をほどいてあげる補助をすることで、いま自分は生活できている。 自分が大きくなることが好きかな。人に施すということは、自分を育てるための勉強道具だと思ってますよ。人間、好きやねんな。最大の教科書やわ。

――お客さんにも色々な人がいるでしょう。全員と合わせるんですか?

小竹 全員に合わせます。ある程度ね。相手に周波数を合わせるのは、僕の得意領域なんよ。俺は英語もスペイン語も中国語もある程度できるから、言葉で合わせることもできるしね。暗い人なんかは、明るくしてあげるように。子どもやったら、飴あげたら喜ぶし、体の悪いおばあちゃんには手を添えてあげる。そうやってアンテナを合わせるんよ。

霧の郷たかはら 概観

データから紐解く

――初めて会うお客さんと、どうやって合わせて行くんですか?

小竹 データから紐解くんですよね。予約の時に、データ入ってくるでしょ。どこの出身か。車できたのか、歩いて来たのか。ウェブから来たのか、誰かのクチコミで来たのか。日によっても違いがありますね。土日の予約やったらサラリーマンかなとか、なんでこんな冬の日に来たんかなとか。来てるっていう事実から、なんで来たんか、何をしたいんか、全部紐解くんです。あとは、先に聞く。熊野古道を歩きたい人には、熊野古道の情報を与えたらいいんです。熊野古道じゃなしに、ただ熊野の山に癒されに来て、昔のこと思い出して昔話してる人には、「どんなとこに住んでて、どんな生活してたの」って聴いてあげて、そこから紐解いてあげる。

――最初はデータから目星をつけて、当たっていくんですね。

小竹 ただね、全員喋りたいってわけじゃなくて、黙って静かにしたいって人もいっぱいおるんや。そんな時は、喋ってるときに相手がスッとクローズすんの。あ、この人は喋り過ぎたらあかんかったやん、という時は、すぐにリカバリーを図ります。「さっきからいっぱいべらべらしゃべってすいません、コーヒーでもどうぞ。何か聞きたいことあったら言ってくださいね。僕は何やかやサービスするタイプですから…。」

例えば、カップルで来て、ふたりだけで過ごしたいっていうときは、あまりしゃべらない。でも、そういうときはツールを使ったらいいの。例えば昨日みたいに、カップルふたりともうひとりのお客さんしか泊まってないときは、お風呂を別々にして、貸し切りにしてあげるの。男湯女湯ってあるけど、片方準備中にして、二人で入りよしって。それだけでも、ツールになるでしょ。

――すごく臨機応変ですね。

小竹 危機管理能力かな。いままでの仕事で海外に行って、パスポートなくしたりお金なくしたり、どうやって生きていこうかって苦労して、危機管理能力磨いたよね。

» Part2 「イギリスからスペイン、そして熊野古道」 へ…

プロフィール

小竹治安(しの じあん)。1971年生まれ、和歌山県南牟婁郡白浜町出身。英国やスペインで青年期を過ごし、帰国後様々な職を経て、熊野古道・中辺路の宿「霧の郷たかはら」のオーナー。白浜地域の開発を手がけた実業家・小竹林二氏を祖父に持ち、地元白浜では明光タクシーの役員も務める。二児の父。
twitter: @kirijian
http://kirinosato-takahara.com/


About Satoshi Iritani

The Portrait of Hosting 主宰。2010年9月、西村佳哲氏がファシリテートする『インタビューのワークショップ』に参加したことを機に、インタビューの面白さに開眼。「入谷文耕堂」を屋号に掲げ、インタビューとウェブ制作のプロジェクトを手がける。 http://irritantis.info/author